云外人间自悠游

濃霧に灯篭を翳して

原風景

不安な時ほど安心材料を集めたくなる。
だが、究極的には何も手に入らない。


僕の手は、ものを掴むには細く…神経質な手だ。
強く握られると骨が軋む音がする。
力む作業には向かない、書き物の手だ。


所有という幻想。
自分の体ですら思い通りにならない。


私は孤独だ。
自由とは、縛られない状態のことをいう。
奴隷であることを受け入れない反骨精神は、
結局自分を追い詰めることとなる。


“生きたくない”
というワガママが、自身を苦しめている。


自分の居場所がほしい。
そう思っても、心の原風景は自分の央にあって
現実世界を探してもどこにも見つからないんだろう。


ホームが欲しいとおもってた。
幼少期、、
離別が多く、安心を知ることのできなかった。


だから執着する。


幼児の心が満たされないことを嘆いて、
何をしていても虚ろな気持ちが晴れない。


僕は居場所を本に求めた。
始め、視線が泳いで文字を追うので精一杯だった頭が
いつしか図書館が唯一の心の拠り所になった。


いつでも身軽に訪れては、
見上げるほど大量の本を自由に読んでいい環境がある。
何も持たないことの豊かさを知ったのは
読書という経験を通じてのこと。


朦朧としていた僕を、
いつでも暖かく迎え入れてくれた司書さん。


あの経験が忘れられない。。


また訪れたいとも思う。


心の原風景は、
きっといつまでもあの場所だ。


暑い日には窓を開け、
寒い日には暖房を付ける。


どんな心境でもいても誰であっても
快く扉は開かれ、
いつでも迎え入れられることのできるような
そんな自分でいたいと思う。